夏場に向けて、今回はフェアウエーの
刈り込み手法の話題です。以前はどこのコースもフェアウエーの右半分と左半分で、芝目が逆になっていた。
理由はフェアウエーを駆るモアの動きが、上り車線が右で下り車線が左という具合に、対面通行の道路(片側車線数の
2倍がフェアウエー幅)になっていたためだった。
この方法のメリットは、モアがターンする回数が少ない事と、フェアウエーと
ラフの境目のラインにある程度の自由度がある事、フェアウエーのセンターが
判りやすい事だ。しかし、フェアウエーの右サイドがすべて逆目になると、ティー
ショットが着地してからのランが期待できず、逆目の芝からの2打目も打ち難く
なるから、右ばかりに球が飛んでしまうスライサーにとっては不利になる。無論、
刈る方向により逆の現象も起こるのだが、フェアウエーの左右で不公平がある
のは理不尽である事は確かだ。フェアウエー全体を、順目もしくは逆目だけにして
しまうのも1つの解決方法(実際オーガスタ・ナショナルでは全て逆目に刈られて
いる)だが、余りにも非効率的だろう。
替ってフェアウエーに刈柄をつける手法が米国から導入されてきた。これは、
フェアウエーの縦方向に刈柄をつける場合、以前の対面交通式と同等の効率で、
フェアウエー左右の不公平感を払拭することができ、アンジュレーションを
際立たせると同時に、刈柄という付加価値を付けることに成功した。この方式は
一定幅のフェアウエーを持つコース、言い換えれば所謂アメリカンタイプの
コースには適正があるが、フェアウエーの幅が変化し、ラフとの境が不定形の
カーブを描くようなコースでは、効率が落ちるようだ。また3連や5連ならまだしも、
7連モアの幅広い帯がフェアウエーを縦に走っていると、景観との馴染が悪くなる
事も指摘され始め、今度はフェアウエーを斜め方向に刈る方法も現れた。刈幅と
刈柄の角度は、キーパーのセンスに委ねられているらしいが、基本的には7連の
大型モアならばプレーラインと45度以下、5連モアならば30度程度までにする例が
多いようだ。これは更に大型モアを導入しても、ターン数が増えるばかりで効率が
上がらない事を示し、GPSを利用した自動刈り込みシステムが実現化されるまで、
更なる効率化はお預けになるに違いない。
ティーインググラウンドからの刈柄の見え方はとても重要で、フェアウエーが
真っ直ぐにも曲がっても見えるし、距離の錯覚も起こさせやすい。莫大な資金を
かけてコース改造に取り組むより、ずっと手軽で効果の大きい付加価値になると
思う。
ところで、コスト削減手法として最近増えてきたのが、セミラフの削除だろう。
この部分をフェアウエーに取り込めば、刈り込む機材や労力を削減する事に
繋がるし、僅かな幅だがフェアウエーが広がり、一般のプレーヤーからも好感を
持って迎えられる。田んぼの畦道を削るようで、余り気持ちの良い手法では
ないが、元々日本のコースは本物のヘビーラフが散在せず、ラフといっても精々
5cm止まりだから、欧州のようにセミラフを設けなくてもラフの芝がフェアウエー
側に倒れ込んで困る事もない。更に、フェアウエーが10mmを超える厚刈で、セミ
ラフやラフとの刈高の差が小さく、ティーインググラウンドから見たコントラスト
が不足しがちだったので、一般のコースでは考えて見る価値がある。
追記(編集者からの質問の回答)
FWに限らずグリーンでも、芝刈機(リールモア)の走った方向に順目の芝目が
できます。ということは、モアの走らせ方によって、順目と逆目を隣り合わせに
する事も可能で、刈柄をつけるとはこういった作業の結果生まれます。この場合
エッジ付近でモアをターンさせ、正確に直前に刈った所の隣にモアをセットしな
ければならないわけですから、大きな円弧を描いて持ってくるか、バックを含めた
切り替えし作業をしなければなりません。通常の芝刈り作業に較べて手間が
掛かるわけです。
さて、ご質問の「FWの縦方向に刈柄」とは、ティーからグリーン方向に芝を刈った後、
その隣を今度はグリーンからティーに向かって芝を刈る事によってできるFWの
縦縞の事です。一度に刈る距離が長いので、モアをターンさせる回数が少なく、
効率が落ちないのです。ところが、プレーヤーと鉢合わせになった時の退避方法や、
不定形のFWラインに馴染みが悪い事などの欠点もあり、もう少し効率を落としても
大型機械を導入すれば良いではないかと考えるキーパーも出てきました。FWを
ネクタイに例えると、縦縞のネクタイから斜め縞のネクタイにしようという事です。
斜め縞の角度が縦縞から遠いほど、つまり15度、30度、45度となるにしたがって、
モアをターンさせる回数が増え効率が落ちます。
グリーン傍のエプロン部分などでは、45度のダブルカットなどを使うコースも
欧米ではありますが、45度以上では余り意味を持たないのでFWの刈柄は最大が
30度程度です。この刈柄の事ををゼブラカットと呼ぶ場合が多いのですが、出来る
だけカタカナ英語は避けたいのと、ゼブラカットと呼ぶと刈る方向の自由度を
制限してしまうように思えたので、あえて使っていません。しかし、ゼブラカット
は今や一般的な呼称ですから、置き換えて使って下さっても構いません。
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