株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2004年7月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第19回
 
フェアウエーの刈り込み手法
夏場に向けて、今回はフェアウエーの
刈り込み手法の話題です。以前はどこのコースもフェアウエーの右半分と左半分で、芝目が逆になっていた。
理由はフェアウエーを駆るモアの動きが、上り車線が右で下り車線が左という具合に、対面通行の道路(片側車線数の
2倍がフェアウエー幅)になっていたためだった。
この方法のメリットは、モアがターンする回数が少ない事と、フェアウエーと
ラフの境目のラインにある程度の自由度がある事、フェアウエーのセンターが
判りやすい事だしかしフェアウエーの右サイドがすべて逆目になるとティー
ショットが着地してからのランが期待できず、逆目の芝からの2打目も打ち難く
なるから右ばかりに球が飛んでしまうスライサーにとっては不利になる。無論、
刈る方向により逆の現象も起こるのだがフェアウエーの左右で不公平ある
のは理不尽である事は確かだフェアウエー全体を順目もしくは逆目だけにして
しまうのも1つの解決方法(実際オーガスタ・ナショナルでは全て逆目に刈られて
いる)だが、余りにも非効率的だろう。

替ってフェアウエーに刈柄をつける手法米国から導入されてきた。これは、
フェアウエーの縦方向に刈柄をつける場合、以前の対面交通式と同等の効率で、
フェアウエー左右の不公平感払拭することができ、アンジュレーションを
際立たせると同時に、刈柄という付加価値を付けることに成功したこの方式は
一定幅のフェアウエーを持つコース言い換えれば所謂アメリカンタイプの
コースには適正があるがフェアウエーの幅が変化しラフとの境が不定形の
ーブを描くようなコースでは効率が落ちるようだまた3連や5連ならまだし
7連モアの幅広い帯がフェアウエーを縦に走っていると景観との馴染が悪くなる
事も指摘され始め、今度はフェアウエーを斜め方向に刈る方法も現れた。刈幅と
刈柄の角度キーパーのセンスに委ねられているらしいが、基本的には7連の
大型モアならばプレーラインと45度以下5連モアならば30度程度までにする例が
多いようだこれは更に大型モアを導入しても、タ数が増えるばかりで効率が
上がらない事を示し、GPSを利用した自動刈り込みシステムが実現化されるまで、
更なる効率化はお預けになるに違いない。

ティーインググラウンドからの刈柄の見え方はとても重要で、ェアウエーが
真っ直ぐにも曲がっても見えるし距離の錯覚も起こさせやすい。莫大な資金を
かけてコース改造に取り組むよりずっと手軽で効果の大きい付加価値になると
思う。
 
ところで、コスト削減手法として最近増えてきたのが、セミラフの削除だろう。
この部分をフェアに取り込めば刈り込む機材や労力を削減する事に
繋がるし僅かな幅だがフェアウエーが広がり、一般のプレーヤーからも好感を
持って迎えられる。田んぼの畦道を削るようで、余り気持ちの良い手法では
ないが、元々日本のコースは本物のヘビが散在せず、ラフといっても精々
5cm止まりだから欧州のようにセミラフを設けなくてもラフの芝がフェアウエー
側に倒れ込んで困る事もない更にフェアウエーが10mmを超える厚刈でセミ
ラフやラフとの刈高の差が小さく、ティーインググラウンドから見たコトラ
が不足しがちだったので、一般のコースでは考えて見る価値がある。

追記(編集者からの質問の回答)
FWに限らずグリーンでも芝刈機(リールモア)の走った方向に順目の芝目が
できます。ということはモアの走らせ方によって、順目と逆目を隣り合わせに
する事も可能で、刈柄をつけるとはこういった作業の結果生まれますこの場合
エッジ付近でモアをターンさせ正確に直前に刈った所の隣にモアをセットしな
ければならないわけですから大きな円弧を描いて持ってくるか、バックを含めた
切り替えし作業をしなければなりません通常の芝刈り作業較べて手間が
掛かるわけです。

さてご質問の「FWの縦方向に刈柄」とはィーからグリーン方向に芝を刈った後、
その隣今度はグリーンからティーに向かって芝を刈る事によってできるFW
縦縞の事です一度に刈る距離が長いので、モアをターンさせる回数が少なく、
効率が落ちないのですところが、プレーヤーと鉢合わせになった時の退避方法や、
不定形のFWラインに馴染みが悪い事などの欠点もあり、もう少し効率を落とし
大型機械を導入すれば良いではないかと考えるキーパーも出てきました。FWを
ネクタイに例えると縦縞のネクタイから斜め縞のネクタイにしようという事です。
斜め縞の角度が縦縞から遠いほどつまり15度、30度、45度となるにしたがって、
モアをターンさせる回数が増え効率が落ちます。

グリーン傍のエプロン部分などでは、45度のダブルカットなどを使うコース
欧米ではありますが45度以上では余り意味を持たないのでFWの刈柄は最大が
30度程度ですこの刈柄の事ををゼブラカッと呼ぶ場合が多いのですが出来る
だけカタカナ英語は避けたいのとゼブラカットと呼ぶと刈る方向の自由度を
制限してしまうように思えたのであえて使っていませんしかしゼブラカット
は今や一般的な呼称ですから、置き換えて使って下さっても構いません。