株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2004年9月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第20回
 
セキュリティー対策にICカード
一般道路からクラブハウスに至る取
り付け道路は、倶楽部の個性が感じら
れる部分であり、なんとなく浮き浮き
する場所なのだが、日本では門柱が立
派でも門扉が存在する倶楽部が少なく、常々不思議に思っていた。 茶の湯文化
の伝統から引用れた結界としての意味
合いなのだろうと勝手に解釈していたが、最近は車やキャディーバッグの盗難事件
が頻発し、ゴルフ場のセキュリティー対策の甘さが指摘されているらしい。

  受付近くに貴重品ボックスを設置する事は、入場者同士のトラブルを防ぐことに
はなるかもしれないが、その前に倶楽部としてやるべきことは、何時来るか判らな
い招かれざる訪問者を、敷地境界で締め出すことだと思う電子情報機器が発達し
た昨今、メンバーには非接触のICカードキーを渡して、ロッカーキーや清算業務と
連動させる事など簡単にできるはずだ。ゲストやビジターには当日しか使えない
テンポラリーカードを発行すれば良いと思う。彼らには来場して受付をする時に渡
しても良いが、事前にドレスコドや倶楽部規約などを沿えてDMで送るほうが色々
な意味で効果が高い。欧州では十年以上前から実用化されている手法だが、電子技
術立国の日本で見かけないのは不思議なことだ。

  建前としてプライベート倶楽部のメンバーズロッカーで盗難事件が起きたとす
ると、メンバーの中に泥棒が紛れ込んでいることになり泥棒が在籍している倶楽
部組織など誰も誇りに思えないから、その倶楽部の価値が極端に低下する原因に
なる。欧州でも実際はロッカールーム内での盗難事件が増えているが、その事を
メンバーは決して口外せず、盗難に遭ったゲストもメンバーの立場を気遣って余り
大騒ぎしないという紳士協定が出来上がっているように感じられる。だからこそ、
クラブハウスや敷地境界でのセキュリティーチェック導入に積極的であれたのだ
ろう。ビジターフィーが下がったおかげで、メンバーシップ取得の意義が薄れつつ
ある現在、この方法は対外的にも差別化をアピールできる、数少ない手法だと思う。

  今回はもう一つ、常々気になっていたクラブハウス周りの植栽とコース内の樹木
についての話題を取り上げよう。巨大で間の抜けた空間構成を批判されることの多
いクラブハウスだがその一因は無計画に配置され育ちすぎた周辺の植栽にある
と思う。須く建築物はその存在を確かなものと認識するために、地面と構造体との
際が大切な意味を持っている。ゴルフのクラブハウスの場合、建築家の意図と反
して多くの管理者は、クラブハウス自体を自然の中に溶け込ませようと考えるもの
らしい。低木を建物の周辺に植えたのだが生き物の成長は十年も経つと背丈以上
になるほど早くヘッジトリマーで刈り込むようになってきた。結果として積乱
雲のように成長したブッシの中にクラブハウスは埋もれてしまい、元々バランス
が良いとは言えなかった建物の立面を更に不恰好にしているようだ。

  この状態を危惧している本当の原因はクラブハウス周辺だけではない。そこか
ら百ヤードも離れていないコース内の植栽との不釣合いが一番の問題でその顕著
な例がティーインググラウンドを取り囲む垣根状の植え込みだろう私には日照条
件や通風を犠牲にしてまで管理し難い状況を作る意図が分からない。