株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2004年12月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第23回
 
ゴルフ界のプロ達は今何をすべきか

 プロ野球のオリックスと近鉄の統合に端を発した球界再編問題は、東北地方に新たに楽天イーグルスという球団が誕生する事で決着した。

数ヶ月に渡った今回のドタバタ劇を傍観していてゴルフ界との類似性に興味を持たれた読者も多かったと思う基本的な状況がゴルフ界と似ており12球団中殆どが慢性的な経営不振に
喘いでいたと聞いただけでも、他人事ではないように思えてくるから不思議だ。

1つの球団が累積債務に耐え切れなくなってしまった事が表面的な原因だが
それを業界関係者が其々の思惑に従って掻き回した事が問題複雑にして
まったようだ各々の裁量権を超えた意見を正当化するためか話を理想論や
全体論とすりえて表明する手法が日本独特の文化らしく、対話にならないのだ。

ゴルフ界も数パーセントの例外を除き、大半のゴルフ倶楽部で健全な経営とは
程遠い状況らしいが、野球界より重症に思えるのは、経営陣と愛好者の他に
クラブ組織という、日本の風習にそぐわない組織が介在していることだ。

倶楽部組織が誕生した大英帝国時代のイギリスでは、旧来の土地所有を基本に
した階級社会に、新たに誕生した工業や貿易業で得た富を基本にした新興
富裕層が加わり活発だが混沌とた社会的価値観を生み出していたそれ故に
ゴルフに限らず倶楽部組織は、旧泰然とした貴族趣味を踏襲しつつも、倶楽部
規約や運営方法を近代的な手法を使う事で発足し始めた。

具体的には、入会審査の過程で複数既存メンバーの推薦を必要とする事と、
入会希望者のプロファイルを一定期間倶楽部メンバーに告知し、最終的には
メンバー自身が将来の同胞となるべき人を選ぶシステムを作り上げたのだ
この手法は当時の英国支配者階級の縮図であり新興勢力が既得権を持った
階級を取り込む過程での出来事だ。

ところが日本の場合、第2次世界大戦の敗北後は大部分の既得権益は一掃され、
新たに非常に単純な金若しくは資金力という秤で物を計ることが一般的になって
しまったこれはとても民主的な解決方法でお金さえ出せれば大概の倶楽部に
入会できる国など世界中で何処にもないのだこの手法は利殖目的で会員権を
購入するゴルファーの需要をも生み少なくともバブル期まではうまく機能した。

しかし景気の冷え込みによる会員権価格の暴落と入場者数の減少はこの手法
の不備を一気に露顕させる事になる本来会員から預かったはずの預託金の
弁済さえできない状態では資金力を唯一の秤として機能してきたこのシステム
は根本から崩れてまい更にビジターのプレーフィーの下落によりプライベート
倶楽部の会員になる意義さえ失われつつあるのだ。

つまり、2世紀も前の英国をモデルにした有形無実の倶楽部組織は、資金調達の
手法を新たに確立しない限り現代の日本では用を成さず、もっと開放的な組織
が必要なのだ欧州では閉鎖的な倶楽部組織との比較でサロン組織と呼ぶが、
殆どの日本の倶楽部がサロよりパブリックース的な手法にシフトするだろう。

今回の騒動でゴルフ界と最も違う点はプロ野球選手達による選手会の活躍
だろう
彼らは知名度が高いためかプロ野球愛好者の代弁者というような
立場を装っていたが、基本的な主張は仕事場を確保したい労働組合の域を出ない。

チームプレーと個人競技の違いなのかもしれないが、ゴルフ界のプロ達は今何を
すべきなのだろうか。