株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2006年8月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第43回
 
英国でのカタカナ英語

事情があって七月半ばまでロシアに帰れず困っている。が、六月の英国は本当に美しい。
未だに英語が苦手なせいか、日本で使う「カタカナ英語」の意味というか雰囲気だけを頼りに、現地人(在英邦人は英国人の事をそう呼ぶ)と話して赤恥をかく。または間違いに気付いて狼狽える事などショッチュウあることだ。

少し前の「キャンペーン」などが良い例で、日本では大規模な宣伝とか、販売促進活動ぐらいの意味だと思うが、本当は(1)社会上・政治上の目的を持つ組織的な闘争や運動。 (2)特定の問題についての啓蒙活動。 (3)大掛かりな商業宣伝。 だそうで、「ボンビング・キャンペーン」といえば、空軍の絨毯爆撃やイランの自爆テロ等、相当に過激な場面で使われることが多い単語なのだ。

もう一つの例は「フリー」で、日本ではフリーコール、フリーセックス(古いなあ)等、自由というか、タダで何かしても良い位のニュアンスだと思うが、現地では「自由」という訳語は同じなのだが、この言葉は何かから『逃げる』『外れる』『除け物になる、される』というような雰囲気が付きまとっていて、日本での華やいだイメージよりは、ずっと陰鬱な感じがする。 丁度サッカーのワールドカップが開催中で、パブは鮨詰め状態なのだが、「フットボール・フリー」の看板を見た。 日本の感覚では『タダで観戦』『サッカー好き集合!』位の意味かと思えば中は閑散としており、老人達がゆっくりワインを楽しんでいるのだ。 つまり、「フットボール・フリー」は「サッカー中継から逃避する」意味なのだ。

最初に英語を日本語訳にする人は十分考えただろうし、日本語の中でその単語を選んだ人も考えただろうが、一旦マスコミに登場すると、単語や数字は本来の意味を離れ一人歩きを始める。 訳語は慎重に選ばねばと改めて思った。

実はゴルフダイジェスト社の来年のダイアリーの原稿を頼まれていて、その読者は『ゴルフ場セミナー』など見たことも無い素人さんだろうから、彼らにも理解できる表現にしたいと悪戦苦闘している。 一番の難関はハザードレイアウトの3タイプの説明で、考えた末に旧来の科罰、戦略、英雄型を改め、懲罰、知略、英雄にしようと決めたのだ。 それと共に説明の方法も、その概念が登場した時代の流れを踏まえて解説し、コース内にあるハザードの実際の見分け方と、併せて構成した。 他人に説明するという行為は、自分自身の考え方を整理するという望外な効果もあり、胸の閊えが取れた感じがする。日本ではフェアウエー傍のバンカーが、画一的で間違った発想の基に造られていると記述したので、興味のある方は購入してお読みください。

芝草管理者諸兄も是非、同僚や家族や友人と、単語の羅列ではない、ちゃんとした日本語で話をしてもらいたい。

最近は雑文書きが多くて、いわばジャーナリスティックな仕事ばかりだが、英国では、「大きな事ばかり言っても、何も実行できない人」または「人の揚げ足を取るのは得意なのに、自分の不備を指摘されると烈火のごとく怒る人」の事を『ジャーナリスト』と呼ぶらしい。 気を付けよう!

そういえば、ジ・オープンの記事を書いていて、R&Aのホームページを覗いたら、懐かしい名前が載っている。 十数年前ロンドンで入会したゴルフクラブのセクレタリーだったルントさんが、次期キャプテンになるらしい。 コース設計講座の同級生だったベッティーナはR.T.ジョーンズJr.の奥さんになったし、世の中狭いものだ。