株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
ホーム
プロフィール
掲載原稿・講演会
週刊コラム
出版物
連絡先
トップページ
月刊 ゴルフ場セミナー 2006年10月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第45回
 
日本と海外の商習慣の違い

商習慣の違いは、ロシアのような物騒な国にいると、考えさせられる事が多い。
先日、通信販売を使って実家宛に中元を送る際「お代は商品到着後で構いません。」と言われて面食らってしまった。

通販利用の経験が浅いので断定はできないが、このようにお金を受け取る前に商品を発送する店は、ロシアは当然だが欧州にも存在しない。 無論、消費者が支払いを拒否した時のリスクを回避するためだが、疑問に思ったのは代金受領前に商品を発送するメリットが何処にあるかだ。 日本人は律儀なので不払いの心配は無用なのだろうが、日本国外では「そんな商行為は非常識だ!」というのが社会通念だろうと思う。 さらにいえば、「お客様を信頼する」事をサービスの一環として捉えているとしたら、サービスの拡大解釈だと思うし、サービスの本質から少しずれているように感じる。 客に迎合し過ぎているというよりは、親切心が過剰で気持ち悪いと思うのだ。

件のお店と関連性が無いと思われるかもしれないが、グリーンフィーをプレー後に支払うのが一般的な国は世界中で日本だけだろう。 それがどのくらい奇異な事かなかなか説明が難しいが、映画を見た後に鑑賞料を徴収する事態を想像してほしい。 確かに欧米でもリゾートホテルに付随したコース等は、グリーンフィーが宿泊料に組み込まれている場合もあるが、これは別の宿泊契約が存在するから、料金精算が利用後だといっても意味が違う。 料金の後払いが許されるのは、事前にきちんとした契約関係が成り立っている場合に限定されるからなのだ。

日本のゴルフ界に「合理的な説明」を求めるのは無理かもしれないとは思うのだが、年会費を払っている会員から毎回グリーンフィーを徴収するのは何故だろう?

これらは単なる商習慣の違い以上に、商品価格やサービスに関する意識が異なり、多くの日本のゴルフ場は欧米に比べ過剰な親切を押し売りした挙句、水商売寄りに傾いているのではないだろうか。

倶楽部のバーやパブを含め飲み物を提供する場合、海外ではその都度カウンターで現金精算するのが普通で、席に座ったままバーマンに給仕をさせた時はサービス料またはチップを渡すと思う。 お金を扱った手で食材に触るといった衛生上の問題も含めて、英国の有名倶楽部ではカウンターを挟んでのスマートな方法を模索しており、一つの解答が二十年程前から行われているハウス・レヴィーと言う制度である。 要はクラブハウス内で使うプリペイドカードで、割引特典がある代わりに翌年への繰り越しは認められないが、アクティブ会員ならば十分使い切る額に設定されているところが味噌である。 現在ではこのシステムは、各種カード機能と結びつき、会員の入出場の管理やセキュリティー上の施錠(とはいっても英国ではロッカーには鍵が付いていないから表玄関用)、プロショップでの買い物、ダイニングルームでの精算に利用されている。 非接触ユビキタス先進国の日本では、防犯を含めもっと多様な使い方があるように思う。

ところで、ハウス内スタッフで倶楽部会員から中元を貰った人は何人ぐらいだろう? ゴルフ場運営を商行為と位置付け、会員を客と考える場合は金品を貰うなど以ての外だが、英国のゴルフ倶楽部では会員がクリスマスなどに、スターターや馴染みのキャディーに数百円程度の贈り物をするのが普通だった気がする。