株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
ホーム
プロフィール
掲載原稿・講演会
週刊コラム
出版物
連絡先
トップページ
月刊 ゴルフ場セミナー 2007年1月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第48回
 
キーパー最大の関心事「グリーンの品質」

年末年始は何か総括をしたくなる時期だが、総論賛成、各論反対になる事も多い。
そこで今年はキーパー最大の関心事、グリーンの品質に関する話から始めよう。 常々現代のグリーンに求められるのは、速さ、硬さ、滑らかさ、省力管理の四点だと述べてきたが、今までグリーンの硬さについては、測定方法を説明した事はなかった。 今回は学術的な計測方法や、ゴルフコースに有益だと思われる手法を考えてみよう。

土壌や地下構造を解析する手法は多種多様で、直接的に表層土壌の性質を測るやり方だけでも標準貫入試験、スウェーデン式、オランダ式二重管コーン等、十種類程ある。 只これらの方法は、地上部分の構造物を支えるための地耐力調査を目的に開発された為、何トンという加重を安定して支持できるかどうかの指針にはなるが、50グラム弱のゴルフボールが地上30mから落ちてきた時の反発係数を解く鍵にはならないと思う。 僅かに、簡易動的コーン貫入試験とポータブルコーン(通称ペネトロメーター)を使う方法が実用化されているが、其々固有の弱点がありゴルフコース計測用として十全な情報が得られる訳ではない。 という訳で、土木工学で標準視されている計測方法は積極的にはお勧めできない。

更に、各ゴルフ場にはグリーンの速さを計測するためスティンプメーターが常備されているはずだが、数千円で購入可能なアルミ製の棒に比べ、安価なペネトロメーターでも十数万円するだろうし、スティンプメーターの使用例から類推するに高価な計測機器を使いこなせるとも思えない。 因みにスティンプメーターは、本来9.5フィートとか12フィートとか、ヤード・ポンド法で計測し、通常0.5フィートが最小単位である。 逆から言えば、あのような計測方法では15cm程度の誤差は許容範囲で、それでゴルフ用として十分な精度なのだ。

ところで、どうしてグリーンの硬さを重要視するかという疑問も当然あるだろう。 理由は大きく二つあり、ショット技術の優劣が結果に顕れる公平なコースにしたい事と、飛距離の出る上級者にはもっと球を操る技術を磨いて欲しいからなのだ。 前者は、フェアウエーから打たれたスピンの効いた球と、少しダフったフライヤーが同じ結果であっては公平とはいえない。と、いう例で納得してくださると思う。 後者はもう一歩進んで、上級者には高い球などで遠くからでも止まる球を打つ技術や、番手を上げて柔らかく打ったり、出球を低くコントロールしたりして、ショートアイアンで掛かりすぎるバックスピンを抑える技術等に挑戦してもらいたいからなのだ。 番外として設計者の永遠のテーマだが、飛距離の出るプレーヤーに対して方向性に自信のある弱打者の味方をしたいという意図もあるのだ。

さて、グリーン硬度計測の最も良い方法は何だろうか? 実は実際に球を打って確かめる事が一番だと思う。 色々意見があるだろうが、150ヤードから七番アイアンで打たれたナイスショットが水平なグリーンで弾み、3バウンド目(又はワンピン程度)で止まり、100ヤードからのピッチングが落下地点から1ヤード以内に留まる位が、個人的に最も面白いと思う。 無論、メンバーの技量や飛距離に合わせる必要があるが、前例はシニアの中級かグランドシニアの上級レベルだろう。 彼らに協力してもらうのが、別の意味からも大切なのだ。

蛇足だが、速さも含め計測用の球はピナクルを薦める。