株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
ホーム
プロフィール
掲載原稿・講演会
週刊コラム
出版物
連絡先
トップページ
未掲載原稿  
 
 
ゴルフ場の地下数百メートル

放射性物質による殺人疑惑を提起している国は、自国に元皇室暗殺の疑いがあり、捜査当局は公式見解を急遽発表して、事件への自国関与否定に躍起になっている。
人を批判するためには、先ず自分の身の潔白が必要という訳だろうが、何とも歯切れの悪い展開になってきた。

米国がイラクに侵攻してからというもの、原因は違うが世界中で地域紛争が頻発している印象で、ベトナム戦争当時と比較する識者もいる。 確かに、英国やカナダを始め先進国でさえ、多くの国で独立運動が勢いを増しており、資源獲得競争や貧困問題、宗教上の対立など、新たな火種は腐るほどあるのだ。 それに比べて日本は、何と穏やかで「美しい国」だろう! 為政者の標語にされる前から、「日本は美しい」のであって、別に彼が日本を美しくする訳ではないのだが。

ところで日本のゴルフ場は、周りの自然が美しすぎるためか、際立って美しいと認識される事は少ない。 世界に冠たる庭園文化があり、伝統的な作庭作法も確立されているのに残念な事だ。 ゴルフ場の運営団体や施工会社は、日本庭園は費用が掛かりすぎて市場のニーズにマッチしなかった。 と言うかもしれないが、当事者が市場予測を見誤り、ゴルファーに迷惑を掛けた訳だし、「美しい国」で育ったゴルファーの見識眼を甘く見過ぎていたようだ。 その意味で、私自身はゴルフの大衆化には懐疑的なのだが、一方で既存のゴルフ場やゴルファーの行く末も心配だ。

形在る物は須く崩壊するという喩もあり、あまり楽しい話題ではないが、延命策や終末医療、お墓の事も考えておかなくてはならない。 最初に、多くのゴルフ場で実現可能な延命策は、固定資産税等の見直し要求訴訟だろう。 次に、あまり褒められた方法とは言えないが、プライベート倶楽部からパブリックゴルフ場への穏やかな移管や、逆に運営経費全額を会員が分担する硬派な倶楽部への変身も、検討する必要がある。 最後に考えるのは、ゴルフ場施設の売却や他業種への転用だが簡単ではない。

一般的に農林業での採算ラインは反当り十万円(平米あたり百円)だそうで、百ヘクタールのゴルフ場なら、なんと一億円になる計算だ。 つまり、年間収益(売り上げではなくて黒字額)が一億円に満たないゴルフ場は、農林業に転向した方が儲かる可能性があるらしい。 問題は、ゴルフ場を廃業しようにも、資金や利権が絡んで上手くいかない事だが、近年全く新たな展開が生まれようとしている。

ゴルフ場施設の特性を考えると、戦後の農地改革のおかげで、今や民有地の中でゴルフ場ほど大きな土地が、極少数の地権者によって纏っている所は他にない。 しかも開発規制の関係から、学校や公共施設から距離を置く事が義務化されている。 と言う事は、民間でなければできない事業で、地域住民から隔離しなければならない事なら可能性が在る訳だ。

答えは先鋭的だが、地下数百メートルの穴を掘り、其処を放射性廃棄物の貯蔵場所にする事だと思う。 国は国家事業として国有地で放射性廃棄物の貯蔵管理はできないだろうし、廃棄物の循環が上手く機能しない実情を考えれば、ゴルフ場が抱える負債を一挙に解決する程度の資金は引き出せるはずだ。 今や日本では、電力の三割を原子力発電に頼っているが、プルトニュームの半減期は二億年以上だから、十数年前のバブルのつけと考えるにはあまりに高い代償だと思う。