株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2007年6月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第53回
 
スペインの食事

スペインの第一印象は、とにかく安くて美味しい物が豊富にある事で、魚介類や熟成ハムや地元のワインが、例外なく結構いける。
今回はスペインに到着して間もないので、ゴルフの話は後回しにして食べ物の話です。

始めに食事時間の話題だが、日本では昼食は正午から1時間、夕食は日没後暫らくしてからというのが普通だろう。 これは夜明けから陽暮れまでを労働時間と考え、その真ん中で昼食をとるという、農耕民族特有の体内時計から派生した休憩時間の決め方だ。 2年前ロシアに行って最初にびっくりしたのは、昼食時間の始まりが遅い事で、彼らによると12時半頃からソワソワし、1時か1時半頃からの1時間が昼食休憩時間。 というのが一般的であった。 スペインは更に遅く、市中のレストランの開店時間は午後2時からが多く、事務員の昼休みは1時半から3時までの1時間半が標準的だという。 伝統的なシエスタは、現代のスペインビジネス界では南部地域にしか残っていないそうだが、公官庁などでは未だに12時半から4時までは業務を行わず、金曜日も午後2時までの半ドンが普通らしい。

勤勉な日本人から見ると「もっと働け!」と思うが、それで生活できるなら家族と楽しく過ごす方が良い。 今後労働人口の減少が避けられない日本には、更に厳しい課題を突き付けるようで気が引けるが、ゆったり生活するスペイン人から学ぶ事もあるような気がしている。

ところで、スペインの夕食時間の方は更に特異的で、レストランの開店時間は午後9時、実際に混み始めるのは10時を過ぎてからなのだ。 午後8時など小学生の夕食時間だそうで、立派な大人たる者は友人達とバールと呼ばれる居酒屋で、夕食前の一時を語り合う物なのだそうだ。 会話も飲食も淡白を旨とする日本男児には辛い環境かもしれないが、少なくとも日本の常識が世界の標準解だと考えるのは早計なのだろう。

料理は基本的には西欧料理なのだが魚介類が多く、蛸やホッキ貝をはじめ、鰯や鮪など馴染みの食材を、簡単な調理方法で供するから日本人にはとてもありがたい。 スペイン料理は伝統的なフランス料理のような凝ったソースは余り使わないが、炭火で焼いただけの方が素材の味が生きて美味しく感じるのだ。 一方ワインも多くが早飲みタイプだが、同程度のフランス産に比べて3割方安い印象で、お買い得感が強い。 スペイン料理店は国内ではあまり見かけないが、イタ飯に比べてもずっと現代日本人の趣向に合っていると思う。

バルセロナの緯度は北海道南部と同じだが、ご存知のように地中海気候なので雨も少なく、東京と比べて夏は涼しく、冬は逆に暖かいらしい。 という事は一年中快適に過ごせる筈で、日系企業の海外駐在員達の憧れの地だそうだ。 このスペインの気候は欧州人から見ても魅力的らしく、退職後の人生を過ごそうと移住してくる人たちも多く、その種の市場もあると聞く。

ゴルフ関係の話でも少なくともロシアに比べれば天国で、バルセロナ近郊だけでも十数コースあり、足を伸ばせば本物のリンクスもあるようだ。 またスペイン南端のコスタ・デルソル(太陽海岸)は、欧州最大の避寒リゾートだから、新旧の設計管理取り混ぜて、面白いコースが目白押しだ。 個人的なゴルフ倶楽部入会の件は、欧州設計家協会のスペインのドンとは旧知の仲なので、多分何処かに入会できるだろうが、前述の理由で久々のゴルフ行脚にも心が躍る。