株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2007年7月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第54回
 
日本国籍のロシア移民

スペインに来て3ヶ月、『日本国籍のロシア移民』が国外退去の憂き目に遭っているので、事の顛末を説明しよう。
現在の欧州諸国は押しなべて移民問題で苦しんでおり、特に中南米からの移民の多いスペインの状況は深刻で、当局は数年前から移民の入国を厳しく制限し始めたようだ。 現在スペインで居留ビザを得るには、過去5年間の無犯罪証明を移民局に提出する必要があり、私の場合はロシア日本英国と、3カ国の警察と個別に折衝する必要がある。 また、私達はスペイン政府から見ればロシアからの移民だそうで、ビザ申請はモスクワのスペイン大使館に出頭しなければならないのだ。

更に先日入国制度が変わり、就労ビザ所持者の家族が同居する為の家族ビザは、就労ビザ受領1年後でなければ申請ができなくなってしまった。 これを額面通りに解釈すると「私だけがロシアに戻り、家族ビザの発給条件が整うまでの1年を過ごす」という事だがとても現実的ではない。 いったん日本に戻って住民票を復活させ、改めて在日スペイン大使館に申請する方が、万事スムーズに行きそうだ。

一方で観光ビザはというと、日本人の場合EU圏(厳密にはシェンゲン協定加盟国)では、6ヶ月以内に90日の査証免除滞在を許されているが、逆に言えば観光ビザで最初に90日滞在してしまうと、あと3ヵ月間はEU圏内に再入国できないのだ。 という事は、4月1日にバルセロナに到着したから90日期限は7月1日、再入国できるのは10月1日以降ということになる。 という訳で、読者がこの稿を読んでいる時分にはシェンゲン圏外に一時退避しており、幸いな事に英国とアイルランドは圏外だから、日本か英国で暮らしているはずだ。 ったく。 ロシアとスペインの組み合わせは、スイカと天婦羅だと思うほかはない。

さて、長々と愚痴を書いたのは、この後にもっと言いにくい事を書くための方便で、国内で活躍するグリーンキーパーにも関係があると思ったからなのだ。 実はロシアでもスペインでも、ゴルフ場での芝草管理者は大多数が自国民ではない。 スペインでは先に書いた中南米諸国の移民だし、ロシアでは旧ソ連邦諸国からの出稼ぎ労働者が大半を占めている。 彼らはゴルフプレーの経験がなく、何を何のために管理すれば良いか判らない。 と、いう高度な問題はさておき、彼らを奴隷か畜生のように扱うグリーンキーパーやメンバーに出会うと、気の弱い小生などはゴルフそのものに罪悪感を覚えてしまうのだ。 移民大国の米国での実情は知らないが、イングランドとスコットランドの関係から見て、貧乏な北国出身のグリーンキーパーが多い英国も、程度の差こそあれ事情は同じだ。

グリーンキーパーも含めて、芝草管理者が誇りを持って仕事に打ち込めるには如何すれば良いのだろうか。 典型的な3K職場で、中小企業と長時間労働という悪条件まで併せ持つ芝草管理者の、地位向上作戦は容易ではない。 直截的な解法は賃金の底上げだろうが、本質的には職能の資格認定制度だと思う。

今月はもう1つ嬉しくないニュースがあり、先日欧州設計家協会の年次総会があり、既にお伝えしてきたと思うが、小生は準会員にステップアップする申請をしなかったという理由で、遂に協会から放逐されてしまった。 無論、条件を満たせば復帰も可能だが、既存設計家の所員になる心算がない以上、今後欧州ゴルフコース設計家協会とは袂を分かつ事になる。