株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2007年10月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第57回
 
コースガイドについて

英国版ウイークリーマンションに住む事三ヶ月。観光ビザでスペインに再入国できるまで待ったが、モスクワからは未だに何の知らせもない。
仕方ないので、ロンドン近郊の倶楽部に連絡をとり、写真を撮らせて貰う事にした。 このような場合、本来は倶楽部宛の手紙で撮影許可を求めるのが正式だが、今回は別な意図から直接プロショップに赴き尋ねる事にした。 案の定、各ゴルフ場の対応はマチマチで、それが見事に巷で噂される倶楽部の「格」と一致するから、英国の倶楽部組織は安心できるのだ。 写真やハザードレイアウトの話は別の機会に譲るとして、今回はこの企画の中で見つけたコースガイドの話題です。

英国のゴルフ場のプロショップでは、何度も回っているメンバーは使わないが、ゲストやビジター用にコースガイドが細々と売られている。 ストロークセーバーとも呼ばれるが、これはこの業界最大手の会社の名前で、小生などこの会社の物だけでもダンボール二個分も持っている。 改めて気付いたのだが、このコースガイドも倶楽部の「格」、つまりコースを訪れるゲストやビジターの懐具合によって幾つかのランクがあり、大衆コースでは五百円程度、今回入手した中では千五百円弱の物まである。

当然体裁や内容も異なり、航空写真を使った物やティーインググラウンドからの眺望と狙い所まで示してある物、グリーンの傾斜や芝目に留まらず倶楽部プロのホール攻略解説付きの物など様々だ。 つまり、装丁や距離計測基準には一定のルールがあるが、盛り込む内容は当該倶楽部の意向が働き、ゴルフに対する考え方が反映される訳だ。

乗用カートを使ったプレーが一般化してきた日本では、コースガイドの替わりにGPSを使った距離表示など当たり前かもしれないが、ゴルフ規則ではラウンド中の計測機器の使用は認められていないから、練習ラウンドならいざ知らずそのスコアーを以ってハンディキャップを査定するのは規則違反になると思う。 同様にコース解説も問題で、プロゴルファーはゴルフ技術を教えるのが仕事のはずで、コース解説はコース設計者の仕事なのだが、狭量な設計者の独善的な見解など、誰も聞きたいとは思うまい。 距離表示の基準や精度に疑問の残る日本の現状から見て、一足飛びに理想形を提示しても意味はないかもしれないが、以下が現在考え得る理想的なコースガイドの概略です。

内容は倶楽部の歴史と変遷に始まり、ローカルルールとコースガイドの使用法解説。 各ホール毎のレイアウト図に続き、スコアーカードと全体のレイアウトという構成だ。

装丁は長手方向の縦が6インチで横はお尻のポケットに収まる幅に作ってあり、上部をスパイラルリングで留めて、下部は出し入れし易いように両側に隅切りがある。 スパイラルリングの利点は、ページを捲った状態で収納できる点と、見開きにならず、頁が交換可能な事である。

ホール毎の頁では、方角を伴ったホール全体が記載され、ティーからもグリーンからもハザードまでの距離が先後端共表記されている事。 フェアウエーの傾斜やスプリンクラー位置の情報も欲しい。 グリーン周辺図では基点をグリーン前端に置き、周りのハザードや花道も含めた配置と傾斜の詳細記載を望む。

このガイドは防水加工や頁の差し替えによって長年使えるから、毎年変わるキャプテンや理事、支配人やプロやキーパーの氏名も設計者と共に記載すべきだと思う。