株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2007年11月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第58回
 
スペインのゴルフ事情

バルセロナに帰ってみると、公共料金不払いのためか電話回線を止められており、復旧には一月以上も掛かると告げられ唖然としている。
自動引き落しに慣れている我々の盲点だが、海外では居留ビザを持たない者が銀行口座を開設する事自体が難しく、そこから個人の電話代を毎月自動的に引き落とすことなど事実上不可能に近い。 かといって、三ヶ月間は国外退去しなければならなかったのだから、電話を止められたくなければ、海外から毎月の料金を電話会社に郵送するしか方法はなかったのだ。 因みに小生は未だに個人名義の携帯電話さえなく、妻の会社名義の電話を借用しているような有様なのだ。

ゴルフ場の会員権も同様に、個人会員になるためには当たり前だが身分保障が必要で、モスクワのスペイン大使館が発給予定のビザが下りていない現状では、何処にも入会するすべがない。 バルセロナに戻れたとはいえ国際法上の現住所は依然モスクワで、ロシアのビザは既に切れたから、小生は地球規模で住所不定無職なのだ。 仕方ないので妻の会社が法人会員になっているゴルフ場に行く事にしたが、それさえも会員と認められるのはハードルが高いことが判明した。

スペインはフランコ政権が崩壊した75年以降急速に民主化し、観光収入の増加に伴ってゴルフなどのスポーツも大衆化してきた歴史がある。 だがサッカー(フットボール)を筆頭に「倶楽部組織に所属してスポーツ施設を使う」という伝統が残っていて、テニスやゴルフなども、倶楽部に入会する事が最優先する。 確かに観光客は自国の倶楽部が発行したハンディキャップ証明証を提示すればプレーできるが、法人会員でも倶楽部メンバーと認めるとなると話は違ってくるらしい。

スペイン各州(日本の県)単位に組織されたゴルフ協会(フェデレーションという)に、倶楽部経由で氏名、住所、納税者番号、国籍、生年月日、電話番号、銀行口座番号等を登録し、背番号(フェデレーション・ナンバー)を貰わなければゴルファーと認められず、したがって倶楽部会員にもなれないから、スペイン国内ではプレーできないのだ。 しかもゆっくり生活するスペインのお国柄を反映して事務処理は緩慢だから、直ぐにでもプレーしたい日本人駐在員は気を揉むことになる。 フェデレーション・ナンバーに関してはパブリックコースを使うゴルファーも同様で、倶楽部経由ではなく、本人が直接ゴルフ協会に申請し、背番号を貰ってからでないとコースには出れないようだ。

このシステムは各倶楽部と共に、各地区のゴルフ協会が直接ゴルファーを把握する事になるので、英国を起源とする倶楽部組織の欧州型発展型と考える事もできる。 上部団体がゴルファーの資格認定をすることで、各倶楽部は独自色を打ち出せるし、倶楽部間の摩擦も減るからだ。 ゴルファー認定の詳細(学科や実技試験)は定かではなく、来月以降に紹介しよう。

さて前述の理由で実際に確かめた訳ではないのだが、スペイン人ゴルファー気質では、『雨が降り始めたら全員ゴルフを止める。』らしい? そんな事を英国でしたらゴルフにならない。と思うのだが、雨が少ない国ではそれなりの国民的合意事項らしく、雨が降れば、たとえ倶楽部競技中であっても、あっさりノーサイドで再試合となるらしい。

バルセロナの天候は大半が快晴で天空に雲ひとつ無い。 諸般のゴタゴタも天気のように解決しないものだろうか?