株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2007年12月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第59回
 
アマチュア競技会

今回はスペイン国内で人気のある、アマチュア競技会の話題です。
11月半ばアフリカ対岸にあるマラガで行われた競技会に主催者側として参加したが、半袖でも汗ばむような天候も含め素直に楽しかった。 この競技会は妻の勤めている自動車会社主催だが、他にも別の自動車会社や電力会社、電話会社など、色々な企業が独自に競技会を主催している。 年の最後には優勝者が一同に会して、スペインゴルフ協会が主催するベストオブベストを決める大会にまで発展する事が人気の秘密らしいが、今回レポートするのは一企業が主催する競技会の決勝戦、スペインゴルフ協会から見れば準決勝に相当するものだ。

その仕組みは、自動車会社の例では、地区予選は各地のディーラーが主催する。 周知のように車のディーラーはその地方の名士である場合が多く、ゴルフ場にも顔が利くし、競技会の宣伝を兼ねて販路を拡大するチャンスも生まれるから一挙両得なのだ。 地区の優勝者と地区予選を主催したディーラーは、今回マラガで行われた決勝戦に夫婦同伴で招待され、30人ほどの地区候補の中から出た今年の優勝者は、以後一生涯決勝戦に招待される事になる。 今年の大会は15回目だったから、過去14回の優勝者とその婦人も、今決勝戦の名誉ある参加者だったのだ。 地区のディーラー夫婦は表向き地区候補の応援目的だが、観光地廻りやディーラー同士のゴルフコンペも同時開催されており、短時間のビジネスミーティングも含め有益に過ごせるよう企画されている。

さて決勝戦後の夜は盛大な晩餐会で、フォーマルな衣装(主催者側はお揃いのネクタイまで支給された)に着替えてカクテルパーティーと夕食だが、スペインらしく開始が午後9時からだから、晩餐会終了時刻は午前0時をとっくに過ぎており、その後殆どの参加者が午前4時半まで踊り狂ったと書けばこの決勝戦がどのような雰囲気であったか想像していただけると思う。

この決勝大会は2泊3日で行われ、2コースと宿泊施設等を殆ど貸切状態で使用したのだが、商品や招待客の交通費も含め、主催者側の出費は数千万円程度でしかない。 地区予選は地方ディーラーが営業経費として落とすから、テレビ等の広告宣伝費に比べると破格の安さで、確実な効果を挙げ、主催者側も楽しめる一石三鳥の催しなのだ。 更に、招待客は自分のゴルフ自慢のついでに主催者(車会社)の熱心な宣伝マンと化すというオマケまであるのだ。

自分が参加しなければ納まらないスペイン人が考え出したこの手法は、タダ・ゴルフという意味では接待に近い。 が、小市民的な利権意識に裏打ちされた社用ゴルフの範疇を超え、手造りの温かみと新たな可能性を秘めている。 参加者が其々無理の無い範囲で、少しずつ資金や労力を拠出して全国規模に発展させ、最後はスペインゴルフ協会まで担ぎ出す企画力も見事だが、参加者自身が楽しめる工夫が随所に在る事が嬉しい。 しかも永続性があり、競技会の人気を巡って企業間競争もあり、観光地で過ごせるから御婦人からも好評で、閉鎖性も感じないから驚きだ。 遊んでばかりのスペイン人に逆に一本取られてしまった。

いまや全国各地に支店や販売拠点を持っている企業は、連帯を強める為に色々な施策を考えているとは思うが、スペイン国内では新興スポーツのゴルフを使って、企業イメージの向上と販売促進を両立させたこのような催しは、日本でも参考になると思う。