株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2008年1月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第60回
 
ゴルフの将来予測

今回で前連載の『トム・モリスの国から』も含めると、連続連載100回になった。
8年以上も書き続けた訳だが、この連載は社会人生活(学校を卒業してからという意味)の半分以上を海外で暮らしてきた小生にとっても、貴重な日本との接点なのだ。そういう意味から今回は、ゴルフが何処に向って進んでいくのか占ってみようと思う。

日本のゴルフ環境は読者の方が詳しいだろうが、世界規模で見ると、日本は地球上で第3位のゴルフ大国で、ある意味では最先端を走っているのかもしれないと思う。その自覚と自信が無い事は問題だが、高温多湿の環境下でゴルフ用の芝だけを選択的に育てる技術と努力は敬服に値するし、それに甘えて下手なゴルファーばかりが量産された事実も見逃せない。床構造に火山性多孔質無機物を添加する手法など、本家のUSGAが追認するような事態まで起きているのだ。倶楽部組織や預託金システムについても、日本をお手本にして改良を加えたとしか思えない方式が海外でも続々と生まれているし、お金を出せば大概はゴルフできる事など、旧来の閉鎖的な倶楽部組織より民主的にさえ思えてくる。

更に用具や用品の世界では、ブランド力や特許件数はともかく、機能や新素材使用では海外勢の追随を許さない。一方でゴルフの本質が旨く伝えられていない印象もあり、自分も含めてジャーナリズム全体が大衆に迎合しすぎた結果だろうと反省している。

さて大急ぎで8年間を総括したのは将来予測にスペースを割くためで、ゴルファーの技術や意識がここまで開いた現代において、全てのゴルファーが納得できる将来像を描くのは難しい事だからだ。

コースについては、上級者と未熟者用のコースを分けて考える事も可能性がある。具体的にはコースの難易度とゴルファーの技術及び満足度を考えると、現代では3段階の階層が必要だと思う。スコアーで3桁つまり100以上叩くゴルファーを受け入れるか否かという第1段階、ボギーベースで回れないゴルファーを拒否するか否かという第2段階、最後は上級者専用のコースだが、職業ゴルファーの競技会を開催するとなるとコースレート80程度が要求されるので注意が必要だ。欧州内著名コースのハンディキャップ制限なども同じような区分けで、セント・アンドリュースのオールドコースが28、ミュアフィールドが18だから、この程度の区分けが現代の匙加減なのだろう。

用具では、トーナメント直後のコースを前日と同じ条件で回る状況を考えてみると、小生のような飛距離の出ない素人は、距離的にパーオンが難しく、ドライバーとフェアウェーウッドまたはロングアイアンとウエッジとパターしか使用しない事が判る。という事は、もし距離の出る職業ゴルファーも、我々が使うクラブと同じ本数のクラブしか使えないとしたら、現状よりも飛距離の優位性が薄れ、球を操る技術が有利になる。つまり、現状の14本より少ない本数制限にすれば、用具の性能は落とさずに、結果的に飛距離抑制に繋がる訳だ。この観点からクラブセットを俯瞰すると、10本未満の本数制限にすれば、距離不足で悩んでいた歴史あるコースを現代に蘇らせる事も可能だ。

最後に規則だが、グリーン上ではパターしか使えないというローカル・ルールは、芝草管理者の為にも、2グリーンシステムの為にも、ジェネラル・ルールに格上げすべきだと思う。