株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2008年3月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第62回
 
スペインのゴルフ場・PGAカタルーニャ

今年のスペインは暖冬で、ロシアからの異邦人は寒さを感じる間もなく春を向かえた。
落葉樹に新芽が吹くのは4月後半からだが、3月に入ると急に陽ざしが強くなって、景色も色鮮やかになってきた。 昨年末、スペインで人気の企業トーナメントの話題をお伝えしたが、そこで知り合ったスゥエーデン人のゴルフプロに誘われて、PGAカタルーニャというゴルフ場に行ったので、今回はその話題です。

彼はIMGの社員で、この会社は60年代のアーノルド・パーマーとの専属契約から始まった事はご存知だと思う。 現在は世界中のアスリート・マネージメントだけでなく、イベントの企画や運営まで幅広く手掛けており、スペインのような発展市場では会員権やコース管理のコンサル業務まで引き受けているらしい。 という事は、このコースのようにPGA関連の施設での発言力は無視できないほど大きく、今年11月には欧州ツアーの予選会場にもなると言う。 現代では、倶楽部会員や理事会といった既存勢力に加えて、インターネットや情報誌による風評、会員権業者やマネージメント会社の意向などが、複雑に絡み合っているのだ。

その意向かどうか分からないが、このゴルフ場は日本のセミパブリック的な運営をしており、月会費を払った予約優先権を持つ擬似メンバーと、同じような種別の法人会員、一般のインターネット予約で稼働率8割と賑わっている。 近年欧州では預託金システムの発展系(入会金を市場価格で次の入会者に譲る)方式が広まってきたが、ゴルフ新興国スペインの一般的手法は、クラブ入会金と年会費の配分が特殊で、数百万円の入会金(退会時に戻ってこない)と、その1割程度の年会費という組み合わせが多いようだ。 倶楽部組織発祥地の英国では2対1が標準で総額も安く、預託金を含めた入会金が法外に高かった代わりに年会費が異様に安い日本とも異なる。

ゴルフがスポーツからレジャーに変貌しつつある昨今、つまり大衆化してゴルファーの見識が低くなった現代において、倶楽部組織に代る新たな評価機関も必要だろう。 それが営利目的の一部アスリートの代弁者である必然性は感じないが、後述するようにコース管理等において適格な匙加減を指摘できるという点において、世界中に張り巡らされたネットワークの強みは一考に値すると思う。

このコースは36ホールズあり、難易度の高い緑コースと平易な赤コースで、マーケティング用語の「多様なニーズに対応する」らしい。 また常緑芝環境で、良く言えばユニバーサル、悪く言えば何処かで見たようなレイアウトばかりのホールが続くが、お粗末な日本のコースレイアウトよりは格段に良い。

さて、シーズン到来直前のコースは、フェアウエーはぬかるんでいて芝はマダラだし、グリーンは凸凹で極端に遅く、印象余りは芳しくない。 途中でグリーンキーパーに聴いたら、今はコアリング直後で2ミリ厚(!)の目砂が目立つが、2週間で見違えるようになる。との事だった。 雨量の少ないスペインでは排水に気を使う必要はないし、GURや雨季ルールも含めて、プレーに支障がない程度の芝環境が維持できれば充分。 と考えているらしく、それはそれである種の見識を感じた。 来月のマスターズ開催コースのオーガスタ・ナショナルは、此処と正反対でコストや対費用効果などは度外視しても、可能性があれば全部試す主義らしくそれも見識だと思う。 コース管理も多様化の時代を迎えようとしているのだ。