株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2008年4月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第63回
 
スペインは初夏モード

3月末の週末で夏時間に変わり、スペインは一気に初夏モードだ。
地中海に面したバルセロナは遊ぶ場所には事欠かず、先日は1泊2日でフランスのボルドーとバスク地方に行ったし、次の週は家人のイースター休暇を利用してスペイン南部のアンダルシア地方を旅行したので、今回はその話題です。

この季節のスペイン南部は欧州で最も人気があるらしく、スペイン語だけでなく英独仏語が入り乱れ、観光客は他の欧州とは違うエキゾチックな異文化探求に勤しんでいた。 この地は北アフリカの対岸で、コスタ・デルソル(太陽海岸)に代表されるように常に天候が良いだけでなく、異文化の坩堝でもあり興味深いのだ。

スペインの歴史は複雑で、ローマ時代のポエニ戦争以後はキリスト教国家だったが、8世紀から15世紀後半まではイスラム教の支配を受け、レコンキスタ完遂後の大航海時代で黄金期を迎える。 つまり、最近日本でも人気のイベリコ豚の生ハムなどは、豚を食べないイスラム文化の反動として発展した訳だ。

アンダルシアでは、ローマ時代の基礎の上にイスラム寺院が築かれ、その後装飾を改修して現在はキリスト教の礼拝堂として使われている所など沢山あり、スペインの文化的背景の複雑さを実感する。 大きな国土を持ちながら近代になってもスペインは、内戦や独裁政権の影響で欧州の中枢とは認められず、ピレネーを越えるとヨーロッパではない。 とまで言われてきた。 国土の過半はグリニッジを通る子午線の西側にあるのに、ヨーロッパ標準時に合わせる事までして欧州連合の一員であると主張する必要性は何処にあるのだろうか?

スペイン語とイタリア語はよく似ている事はご存知だと思うが、バルセロナに来て1年が過ぎ、最近感じるようになったのは、スペインは韓国と似ていると言う事実だ。 大陸の突端に位置し、陸続きで大国や列強と対峙しながら、一方では海を少し隔てた所に在る小癪な小国も気にかかる。 という図式だけではなく、異なる文明を受け入れざるを得なかった歴史が良く似た情緒を育んだように思うのだ。

しかし、スペインの場合、極々一部の非常に優秀な識者が国の方向性を決定している印象で、あまり勤勉とはいえない大多数の国民を好い方向に導いているように思う。 彼らが日本人のような律儀で従順な国民を指導したら、どのような国になるか見てみたい物だが、中流意識の高い国民は自分と違った意識構造に対する嫌悪感も強いから、結局はドングリの背比べ的な現在の権力分布しか受け付けないのかもしれない。 日本に一番欠けている物は、優秀な指導者だと思う。

さて、米国のサブプライム問題に端を発した金融不安は、本家よりも日本の方が大きな反応で、欧州では日本の金融市場の信頼性を疑問視する論調が台頭してきたが、最近は欧州にも飛び火して景気後退期を裏付けているようだ。 確かに近年の欧州景気はバブリーな印象で、スペインの物価上昇も過熱気味だったから、マーケットが前年比三割減、と聞いても驚きはしない。

さて、このような状況下でもゴルフ界には影響が無いという事は考え難く、正確な情報ではないが、順調に伸びてきたゴルフ場の入場者数にも陰りが見えてきたという。 スペインのように、外国からの観光客ゴルファーが多い場合は特に影響が出やすく、先日訪れたアンダルシアでは、ツアー客目当ての値引き合戦も始まっているらしい。