株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2008年11月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第70回
 
海外の家電製品

スペインでも日本の家電製品は評判が良く、韓国や中国の製品に混じってではあるが立派に競争をしている。
ただし、カメラと違って欧州メーカーとの競争では分が悪く、シェアはドイツや北欧勢に押されているようだ。

この事は、入居当時から備え付けのオーブンが不調で、日本製の新型調理法が使える機種を物色している時に気が付いたのだが、スペインには日本国内では毎年発表される新製品は回ってこないのだ。 同じ商用電源電圧を持つ欧州内のサイトも調べたのだが、日本の家電メーカーが欧州で販売している製品は、国内では廃番になった普及品タイプの焼き直しらしく、画期的調理法など望むべくも無い。 白物家電においては日本からの輸送コストや現地での購入価格帯を考えると、少しでもコストを抑えた製品を輸出するのが得策なのだろう。 が、この判断は更に製造コストの安いアジア諸国との価格競争に晒される事を意味し、逆に輸送コストが少ない上に想定耐用年数が現地の実情にあっている欧州メーカーとの狭間で苦戦している印象だ。

以前暮らしたロシアを思い返すとモスクワにも秋葉原のような電気街があり、世界中の一流ブランドの最新型が並んでいた。尤も値段は青天井だし、一部の特権階級の玩具で庶民には縁がないから、販売量は僅かだった筈だ。 余談だがお金持ちの国際定義は、住居を除いて1億円以上の資産がある事なのだそうだ。 つまり、お金が潤沢にあり、最新の製品が差別化の道具として機能する場合は高額商品でも売れる可能性があるが、市場が熟成し買い替え需要が過半を占めるようになると、ライフサイクルコストが重要になるという訳だ。

では高付加価値商品とはどの程度の値段から意味を持ちはじめるのだろうか? 大雑把だが1g当り1円(1kgで千円、1tで100万円)というのが丁度良い指標だと思う。 エンドユーザーから見ると、豚肉や自動車が好適だろう。 逆に言えば、トン当り数万円の商品に輸送コストを掛けて輸入するなど馬鹿げている。 別にゴルフコースの砂の話ではないのだが、石油などのように国内では手に入らない物は別にして、工夫すれば手近で調達できる物は生産地近くで消費する方が良い。

ところでお金という物差しで全てを判断する事には抵抗があるが、現代では商品価格の過半が労働コストだから、人件費の削減は即競争力向上に繋がり、その効果はゴルフ場でも同様である。

調理器具のついでに家電製品を検索していたら、米国製の掃除ロボットを発見した。 この直径35cm高さ7cm程の掃除機は自律型人工知能を持ち、掃除したい曜日や時間を設定すれば自動的に掃除を開始し、終れば自ら充電機に戻るらしい。 口コミ情報の感触では現段階では未だ実用的ではないようにも感じるが、ロボット工学や人工知能という分野は近年凄まじい勢いで発展しており、この種の機器は10年後には多くの場所で活躍するだろう。 同じような構想を発展させ、庭やゴルフ場のセミラフなどに使うロータリーモアも自走式になり、芝刈り作業するだけの芝草管理者は過去の遺物と化す可能性は大きい。

今のキーパーが10年前に先輩から教えられた管理手法は、経済状況や管理機材の変化に伴ってそのままの形では後輩に伝授できないのと同様に、仕事の速度や内容の経年変化も容認せざるを得ないだろう。 『その時代の先進技術を獲得した者だけが、次の時代を担うチャンスがある』という格言も昔からあるのだ。