株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2009年8月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第79回
 
真夏の怪談?

今回の2つの話題は両方共別々の知人に聞いた話なので、事実かどうかの確証はない。
しかも、老人のピヨピヨ現象なのだろうが、余りにも素直に納得できる話だったので、小生は史実の確認もせずにそのまま信じ込んでしまった。 考えてみれば、個人の知識を構成する要素は同様の事例が多く、改めて考えてみると心許ない限りなのだ。

ゴルフの聖地セント・アンドリュースのオールドコースホテルは、元々鉄道の駅舎があった場所に再建された建物である事は御存知だろう。 エジンバラからフォースブリッジを渡り、セント・アンドリュースまで伸びた鉄道網は当時の英国の経済力と技術力を象徴し、多くの都市ゴルファーをリンクスへと誘ったに違いない。 しかし、少し遅れて実用化されてきた自動車と幹線道路網に急激にその地位を奪われ、乗客は減少し路線は廃止され、コース脇の1等地に駅舎だけが残る状態が長く続いた。 この場所を巨大なホテルにする案など誰でも思いつくが、コース脇に立ち並んだ既存のホテル群との折衝が難航し、セント・アンドリュース市議会も推進派と反対派に分かれて喧々諤々の議論を繰り返すばかりだったそうだ。 そこで推進派は夏のバカンスシーズンで閑散とした議会を良い事に、ホテル認可の採決を強引に行い、めでたくオールドコースホテルが誕生する事になったという訳だ。

ホテルが接する17番ロードホールは『4打で通過するには非常に難しいホールだが、5打で通過しようと考えれば易しいホール』と呼ばれ、長らくゴルフの本質を具現化していると賞賛されてきた。 今年のThe Openでも活躍したトム・ワトソンの全盛時代は2打目に4鉄使用が標準的だったように記憶しているが、昨今のプロはウエッジのコントロールショットばかりでアンジュレーションの意味が無くなってしまい、古典的なゴルフ設計者には溜息しか出てこない。 お願いだから来年の競技会までに何とかして欲しい。 と訴えるべきなのか?

もう一つの話題は、現代というか近未来の話で、ゴルフとは直接関係がなく、場所もスペインの話だ。 バラバラだった欧州諸国が集まって、国際社会でアメリカ合衆国に対抗できる発言力を得ようと、EUを発足させた経緯は御存知だと思う。 それだけでも歴史的な挑戦だと思うのだが、さらに税制は独自性に任せながら通貨統合をも果たし、近年のユーロは立派な主要通貨である。 しかし欧州連合も最初から加盟国が多かった訳ではなく、始めの頃はイタリアとスペインがお荷物だった事は想像に難くない。その後東欧諸国が加盟するようになったためにスペインの影が薄れただけで、フランスやドイツなど欧州の主要国から見ればEU財政を圧迫する金食い虫だった。 平たく言うとスペインはEUから援助を受けて経済の建て直し?をしていた訳だ。 『借りた物はいつか返さなくてはならない。』 実は、EUから援助してもらったお金の償還期間は2012年から始まるらしいのだが、御存知のように欧州の中でもスペインは突出した不景気中で、大多数の国民はそんな事はお構いなしに最低3週間のバカンスを楽しんでいる。

今回の話で背筋が寒くなった読者がいたとしたら、真夏の怪談として筆者の意図は達せられるのだが、、、 『なるようにしかならない』事をスペイン語で『ケ・セラ・セラ』といいスペイン人は地で行っているが、日本のゴルフ業界は違うと期待したい。