株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2009年11月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第82回
 
グリーンフィ課金制度の見直し

バルセロナは東京と比べて夏は涼しく冬は暖かい上に快晴の日が多く、陽の光が鮮やかなので戸外が気持ちよい。
尤も海洋性気候のため、湿度は年間を通して70%内外で推移し、マドリッドよりムシムシすると評されている。 バルセロナを中心都市とするカタルーニャ人は、スペインの中では勤勉で商の才に恵まれていると言われてきた。 ガウディーを頂点とするモデルニスモ時代から、繊維産業で巨万の富を得たグエル氏が、ガウディーのパトロンであった事はご存知だろう。

小生は彼の出世作である『ドラゴン門』のグエル別邸(週末を過ごすという意味からは下屋敷に近い)の近くに住んでいるのだが、最近、グエル氏ほどの富豪でなくても多くの人が週末の別邸を持っていると気が付いた。 きっかけは、2週間毎に五十肩の治療の為バルセロナから車で小1時間の海辺の治療院に通っているのだが、治療師さんに『この辺りはバルセロナに住んでいる人達の別邸が多く、夏のバカンスシーズンは患者さんが多くて自分の休暇どころではない。』 と聞いたからだ。 なるほど週末になるとピソの駐車場がガラガラになる理由が理解できた。

それにしても別荘を持つなら、横浜に住んでいて湘南に別荘を持つような事はせずに、日頃住んでいる場所とは違う環境を望むような気がするが、その発想自体が貧しいのかもしれない。 スペインでは都会に暮らす普通のサラリーマンが極普通に別宅を持ち、ゆったり暮らすのが当たり前なのだという事実は、悔しいけれど本当なのだろうと思う。

金融不況から立ち直りつつある欧州の中で、スペインだけは相変わらず景気が悪く、失業保険の切れ始める来年は社会不安も広がり、治安の悪化が懸念されている。 不況の煽りを受けるのは何時の場合も底辺を支える人達で、スペインでは南米からの移民なのだが、彼らはいつの日か別宅を持てるだろうか?

さて冬休みは地中海沿いにローマ行脚する予定なのだが、予約と支払い順序を変えたホテルが多い事に気付いた。 今までは予約は当然無料で、宿代は後で払っていた筈だが、キャンセルポリシーもあり、無断取消しが全額、宿泊当日のドタキャンが半分、程度差はあるが数日前の取消しなら無料が普通だった。 ところが新方式は予約と同時に課金され、キャンセルすると殆どの場合料金は戻らないシステムになっている。

これらはどういう意味持っているのだろうか?  ホテル側からすれば予約と同時に入金があれば資金繰りが少し楽になり、予約取消しのリスクを排除できるだろう。 インターネット予約が普及し、旅行代理店の仕事だった物を利用者本人が行えるようになった反面、予定を変更し易いと『取り敢えず権利を確保しておく。』 という風潮が生まれ、予約状況と実際の稼働率の乖離が大きくなったのだ。

今までは予約時点で権利は確保されるが義務は発生しなかった訳で、考えてみれば利用者に一方的に有利な不平等な条件だったのだ。 権利と義務が同時に発生する新方式が、利用者(つまり既得権益保持者)の賛同を得られるかどうかは、彼らへの新たな利益供与とその周知如何だが、この不景気の中で公平な商取引条件が容認されるかどうかは微妙だと思う。

この話は当然、ゴルフ場のグリーンフィ課金制度の見直しが念頭にあるのだが、会員と一般客の新たな差別化手法に発展すればと思う。