株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2010年2月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第85回
 
南欧リゾートコースの話題

経済発展の著しい国をBRICsと一括りにして呼ぶ事はご存じだと思うが、南欧のPIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)にアイルランドも加えて、最近はユーロ圏のお荷物と揶揄する風潮が広まってきた。
ドバイショック以降のユーロ安を助長した犯人捜しだ。 元々ユーロによる通貨統合は、税制や民度が異なる国を強引に纏めたものだから、今さら南北問題を蒸し返しても景気が好転するとは思えないのだが、刹那的でお気楽な同胞を叱咤する心情も理解できる。

さて正月休みに地中海沿岸のPIGS諸国を3000qも走破して堪能した小生は、通貨統合は欧州連合という壮大な実験の前哨戦でしかない。 という楽観論者になった。 今や世界経済の大半に多国籍企業が関与しているし、欧州内では国境という概念さえも希薄になりつつあるからだ。 何処に住んでいようが結局、人の関心事は遠く離れた場所との格差ではなく、隣人との比較に収束するように思う。

それはそれとして、南仏やイタリアの地中海沿岸は古くからの高級リゾート地だから、当然リゾート目的のゴルフコースが点在し、今回は南欧リゾートコースの話題です。

風光明媚な観光地は大概起伏ある地形なので、コースだけ見れば雛壇型の寸詰まりなのだが、逆に言えば視界が開ける場所もあり、南欧ならではの眺望が楽しめる。 今回は食欲が勝ってプレーはしなかったのだが、キャディーバッグを抱えてホテルにチェックインする英国人や米国人家族を何人も見かけた。 なにせ彼らはストローハットと半パン姿なので目立つし、もし冬以外ならアロハシャツでも区別できた筈だ。 何もそこまでしてリゾート気分を盛り上げる必要もないのにと思うが、その格好でゴルフ場に出かけても南欧ではさして問題はないようだ。 たまに休暇中の米国人と一緒回る事もあるのだが、彼らは服装を別にすれば例外なく礼儀正しく、ハイソックスを履くよう勧められると、嬉々としてご当地倶楽部のロゴ入りを購入するのが常なのだ。

欧州のリゾートコースは、地元の会員制倶楽部の門戸を広げた形式が多く、複数のホテルがスタート枠(というか予約代行権)を持つ事が多い。 コースによってはハンデ証明証が必要なのかもしれないが、国外から来た観光客には押しなべて寛容だと思う。 グリーンフィは邦貨で1万円を超えず、欧州人は手押しカートを借りるのが一般的。 グリーンはバンピーでコース管理もソレナリだが、問題視される事もないようだ。 またローカルルールも存在するが、色々の国からの旅行者が利用するリゾートコースだからこそ、混乱を招くようなジェネラルルールと大幅に異なる規則は嫌われるようだ。

ゴルフ学会などでも議論された事もあるが、リゾートコースだからといって、特別なレイアウト手法はない。 他の観光産業との連携や競争の結果、一部の例外を除いて小振りで、現代の基準からすると危険箇所も散見されるが、誰もスコアに執着しないから打球事故は起きないようだ。 欧州のリゾートは家族や友人と楽しい時間を過ごす目的でやってくる観光客が多く、プレー速度は下がるようだが、逆に遅い組は徹底的に道を譲ろうとするのが普通だ。 理由は同じグリーンフィで長時間楽しめるからだと思う。

それにしても、1日50人もプレーしないコースが、どうしたら運営していけるのか? 日本のゴルフ界の常識を疑ってみる必要もありそうだ。