株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2010年4月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第87回
 
欧州からの日本のイメージ

引っ越し前の忙しい時期でも食欲だけは衰えず、週末を利用し1000qも車を飛ばして、サン・セバスチャンに行ってきた。
バスク地方はフランス側も含めて美食で有名なのだが、魚料理で日本人を感心させる事ができる料理屋など欧州内でも数えるほどしかない。 ところが昨今の健康志向ブームの影響からか、欧州の著名レストランでもテースティング・メニュー(おすすめコース料理)の中で魚料理の比率が高くなってきたのだ。 当然料理人もフィッシュ・イーターの日本に注目するようになり、盛り付けの美しさで西洋料理界に新風を送り込んだ前菜に続いて、主菜の一角も日本料理の模倣が占めるようになってしまった。 今の所、肉料理に関しては素材やオーブンの扱い方で欧州に一日の長があると思うが、既にケーキ類は日本も美味しいから、料理界で日本が西欧を駆逐する日も近いと思う。

ミシュランのレストランガイドはフランス本国での低迷から、米国や日本といった新興国にシフトしつつある。 と指摘されてはいるのだが、今や東京は世界一の美食都市である事には異論がない。 ソムリエの世界でも、日本は有資格者数でフランスやイタリアを遥かに凌駕しており、ソムリエを題材にしたマンガでさえフランスから料理本として高い評価を受けている。

長く欧州に暮らしていると現地人の日本に対するイメージが時代と共に移り変わってきた事に気付く。 90年代では以前の欧米模倣一辺倒から少し脱却し、適正価格で高品質な物を作る国。 今世紀初頭は工業製品の価格優位性が薄らいだ一方、アニメやゲームといった日本の独自文化が広く受け入れられた時期であったと思う。 最近の欧州で感じる限りだが、家電製品は品質価格共お隣の韓国に抜かれたし、造船や自動車はニッチなマーケットにしか活路を見いだせないようだし、エネルギー関連や通信機器は国策が絡むから外交下手な日本は望み薄だし、金融や建設業はハナから相手にされていないようだ。

逆に日本女性の評価は昔から高い(男性が極端に低い)のだが、これは実際の歳より若く見える事が原因らしく、日本がアンチ・エージングというか美肌の国際ブランドになりつつあるようだ。 だから体型を保つための食事療法としての日本食や魚料理、果ては入浴習慣や化粧品までが長寿国日本を模倣し、ブランド化しているように思う。

余談だが金髪女性が好まれる原因は見た目だけでなく、金髪が欧米人にとって若さの象徴として機能するからだ。 欧米白人の幼児で漆黒の髪を持つ子は稀で、大概は淡い色をしている。 が、成長するに従って色素が濃くなり、赤毛や黒髪になるのが普通だ。 という事は、大人になっても色素の薄い金髪のままなのは、永遠の若さ(幼さ)の象徴になりえるわけだ。 でも、中年以降の金髪女性と日本人女性を比べ(てはいけません!)た結果が、欧州人自身による日本のブランド化なのだろうと思う。

人種差別主義者と思われると困るので今まで内緒にしていたのだが、未だに小生は金髪のシェフが作った料理で美味しいと感じた経験がなく、電話の声を聴いただけで彼女が金髪かどうか言い当てることができる特技の持ち主だ。 張出先進国と揶揄されている日本だが、市場性のある物が造り難くなったからと言って、我慢し、努力し、汗をかく事だけが我々の解決方法ではないような気がするのだ。