株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2010年5月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第88回
 
ハンガリーのゴルフ環境

慌ただしい引越しも終り、気持ちも新たにハンガリーのゴルフ環境を調べて愕然とした。
その報告の前に読者には馴染みの薄いであろうこの国の概要をまとめておこう。

ハンガリーは『ヨーロッパに投げられたアジアの石』と呼ばれ、ハンガリー人(大半のマジャール人)は匈奴(フン族)の末裔でアジア系民族である。 フィンランドと共にフンガリーが訛ってハンガリーになったという俗説まである東欧の小国である。 日本の1/4(北海道より少し広い)の国土に約1000万人の人口で、首都ブダペシュトにその二割が暮らしている。 緯度は樺太南部と同程度だが、大陸性の盆地気候なので夏は日照時間が長く暑くなる。 が、ブタペストと東京を比べると、降雨量は1/3で年間平均気温は5度以上低い。 国の歴史は非常に複雑なので政治経済の現状だけをお伝えすると、89年の体制転換以来『東欧の優等生』として発展を遂げ、04年にはEU加盟も果たしたが、その後の経済危機の影響からユーロ導入は見通しが立たず、今年4月の総選挙の結果を受け政権交代が確実視されている。

ブダペシュトは『ドナウの真珠』と称され、北から南に流れるドナウ川の西側がブダ、東側がペスト(ペスト病とは無関係)で、数々の戦災にもめげず再建され、世界遺産にも登録されている。が、小生には各時代の様式が無秩序に折衷し過ぎてディズニーランドみたいで悪趣味に感じる。

駆け足でハンガリーの旅行代理店的な説明をしたが、旧共産圏だからゴルフに関しては完璧な新興国である。 政府観光局発表のハンガリーのゴルフ環境は、年間220日間ゴルフプレー可能で、18ホールズのコースが6ヶ所。 他に6ホールズから9ホールズのコースが6ヶ所、練習場が5ヶ所、さらに建設中のコースが6ヶ所あるらしい。 グリーンフィーは週末でも一万円を超える所はなく、コースレートとスロープレート両方を取得しているが、倶楽部ゴルファーに好適な難易度で男子のプロトーナメントには易し過ぎるようだ。

同じホームページ内に近隣諸国のゴルフ事情も載っており、07年の集計だがゴルフ場数だけでなくゴルフ人口なども詳しいので、ご覧になるとビックリなさると思う。 チェコの68ヵ所、28700人、ポーランドの25ヵ所、1997人、スロベニアの10ヵ所、6121人だけが2桁のゴルフ場を持つ国で、以下エストニア、スロヴァキア、ハンガリーが6ヵ所、ブルガリア、ラトビア、リトアニアが3ヵ所、クロアチア2ヵ所、セルビア1ヵ所の合計135ヶ所。 ゴルフ人口の合計が44891人、ゴルフ場当たりのプレーヤー数が333人、人口あたりのプレーヤー数は0.038%だそうだ。 つまり中東欧諸国の現状では、ゴルフは外国人駐在員または海外からの旅行者のため遊興施設で、国民の中にスポーツとして根付いているとは言えないように思う。

ハンガリー日本人会(在留邦人は千二百人余り)に拠ると、ブダペシュト近郊にはゴルフ場が3コースあり、日本人同士の月例会も年9回開催されているようだ。 ハンガリーのゴルフ人口は1221人だから、在留邦人数と国中のゴルファー数が同じ訳で、この事からもハンガリーにおけるゴルフの位置づけを想像して頂けると思う。

ハンガリーは国土の4/5が平地で、元々は豊かな農業国だった。 交通機関が発達し、資本導入が上手く行けば、世界屈指の難コースを造る事など容易いのだが、、、。