株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2010年6月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第89回
 
ハンガリーの言語

ハンガリーは国民の間ではマジャールと呼び慣わされ、私達が良く使うハンガリーという国名は英語の呼称だと認識されている。ジャパンとニホンとの関係と同じだ。
マジャル語(ハンガリー語)はウラル語族に分類されており、西欧諸言語の多くが属するインド・ヨーロッパ語族とは大きな隔たりがある。 アジア系の言語である事から姓名や日付の順序は日本と同じなのだが、子音配列が違うので単語の発音さえ難しい。 当然、日常会話も理解できないままだが、小生はあっさり語学習得を諦めてしまった。 理由はカタコト英語でも生活可能で、肉屋のオバチャンが私より100倍も流暢に英語を操る事が多いからなのだ。

ハンガリーは小国だから隣国の影響を受け続け、直近の100年だけでもハプスブルグ家二重帝国時代はドイツ語、大戦後はロシア語を理解する人が多かったそうだが、最近は英語習得熱が高いようだ。 同様の理由で、映画やテレビ等も翻訳や吹き替えはできないから、結果的に直に外国語に接する機会が多いのだ。

国際補助語という枠組みをご存知だと思うが、共通の母国語を持たない場合の意思伝達手段は、エスペラントのような人工言語を使う方法と、英語や仏語のような自然言語で代用する方法がある。 自然言語は使用人口で見ると中国語が圧倒的なのだが、現代国際社会の使用頻度では英語かスペイン語が事実上の標準解になっているようだ。 国連では英語、フランス語、中国語、ロシア語、スペイン語、アラビア語の6言語を公用語としているが、経済や文化の面で重要な役割を担っているはずの日独伊が除かれているので、未だ戦後が終わっていない印象もある。

ところで、ハンガリーは第1次、第2次世界大戦の両方とも戦敗国である。 ドイツ以外にそのような国があるとは驚きだが、この認知度の低さが現在のハンガリーの実情をよく著している。 南欧諸国のおかげで欧州通貨の信用不安が高まり、遂には欧州凋落の始まりだと囁かれているのに、ハンガリー・フォリントはユーロに対してもさらに値を下げているのだ。 嗚呼、情けない!

さて、言語の話題に戻ると、ゴルフはスコットランドからイングランド、更に米国や世界中に伝播した歴史があるので、英語もしくは米語がゴルフ界の公用語である。 しかし英米語のヤード・フィート・インチを使う単位系は今や世界中でも少数派で、仏独伊を初めスペインやハンガリーやロシアといった大陸ではメートル法が標準解だ。 飛距離はヤードで表すのにグリーンに乗った途端メートルを使うのは、世界中で日本のゴルフ番組だけなのだ。 身長6フィート(2ヤードつまり183p)未満の人が、歩幅1ヤードで歩き続けるのは相当無理があるので、普通の日本人には3歩2mで距離算定する事を推奨している。 試すと判るが、この方法だと誤差5%内外に収まる筈だ。

もう1つ言語の話題だが、英米でのゴルフルールは当然英米語で記述されているが、ロシアもハンガリーでもR&Aの直輸入版を使っていた。 スペインでは当地のゴルフ・フェデレーションが出版したスペイン語版があり、民間出版社もスペイン語のルール解説本を出しているから、日本と同環境と言えるだろう。 問題はその版権(というか知的財産)で、R&Aに断りなくルールを翻訳して出版していた某協会に、R&A役員が苦言を呈した。 という昔話だ。

言語は単なる意思伝達手段だけではないらしい。