株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2011年1月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第97回
 
倶楽部経営と消費税

半年ぶりに一時帰国して世界一の食文化を堪能したが、逆に政治や住環境のお粗末さも再確認してしまった。
年の初めは原点に立ち返って、倶楽部経営の可能性について考えてみたいと思う。

我が国の首相は今年の6月を目処に消費税を上げる道筋をつけたい意向のようだが、英国では今年の1月4日からVAT(付加価値税)が20%になった。
元々は17.5%だったが、リーマンショックによる景気低迷で一時的に15%に下げられ、昨年十月から17.5%に戻し今回明らかな増税になった訳だが、キャメロン政権は十三年ぶりの政権交代と英国憲政史上極めて異例の連立政権という困難な状況の中で、就任直後の昨年六月に今回の増税を発表したのだ。
一方、ドイツのメルケル首相は旧東ドイツ出身で、元々は物理学者だそうだから選挙戦の地盤があったとは考え難いが、増税を公約に掲げて首相に就任したと記憶している。

一般に選挙時の増税議論は国民の人気を下げる要因だと思われているが、国家財政の危機とその脱却に至る道筋を示すことによって、逆に誠実な現実主義者で頼り甲斐がある政治家だ。というアピールをすることもできると思う。
欧州においては、デモやストが起きる原因は増税ではなく、大半が社会保障費のカットに反対するものなのだ。

日本での消費税は二十年程前から導入されているが、小売段階の一般消費税という意味では1954年のフランスの付加価値税が最初で、税の中では最も新しい徴収形態だから色々な不具合も指摘されている。
最たるものが逆累進性で、所得が少なく貯蓄に回す余裕のない人ほど、家計の中で消費に回す割合が高く、結果的に消費税を多く払わなければならない等である。しかし食料品や特定品目の軽減税率を定めている国もあり、その活用により補完できるだろう。
現在のEU諸国の税率は概ね20%内外だが、居住中のハンガリーは25%で泣けてくる。
ついでにBRICsも調べると順に19%、18%,12.5%,17%なので、日本の5%はたとえ現在の四倍になったとしても驚きはしない。

国民が消費税の税率アップに消極的なのは当たり前だと思うが、少子高齢化に伴う社会保障支出の増大と、GDPの二倍もある累積赤字を考えると、何らかの方策を講じなければ財政破綻が待っている事も周知の事実だと思う。
問題は解決に至る道筋が何処からも明示されない事に対する苛立ちだろう。
二年分の所得に相当する額の借金があり、この先収入が増える見込みが余り無い場合、五年や十年の返済計画では過激な節約をしなければならず現実的とは言えないだろう。
少なくとも三十年は掛かると覚悟したほうが良いだろうが、首相を含め誰もその話はしたくない気持ちも理解できる。
原因を作ったのは長きに渡って政権の座にあった某政党である事は明らかなのに、グッと文句を堪えている事は評価できるが、今年の予算も税収より国債発行額が上回ったので同じ穴の狢の感が強い。

長々と消費税や累積債務の話をしたが、全く同じ現象がゴルフ界でも起き、未だに解決されてはいない。
バブル期に開場した所など、百億の債務に年間数億の売上なのだから、江戸時代の徳政令でも起きない限り(起こしたか?)健全な倶楽部経営には程遠いのだ。

永続性は難しいがせめて長期持続可能な枠組みの策定と、消費税一割時代への対処方法は纏めておくべきだろう。